ギャンブル依存症患者560万人の現代日本で、なぜあえてカジノ法案を成立させらなければならないのか?

みなさん、こんにちは。
心理カウンセラーのなるです。

先日、カジノ合法化を含む「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(通称「カジノ法案」)が通常国会で審議入りしましたね。カジノ法案成立に向け、加速する社会情勢を受けて「ギャンブル依存症研究所」としては、社会における組織の立ち位置を明確化していくことが求められると考えます。

それに先立ち、まずはギャンブル依存症のケース扱う心理カウンセラーの立場から、当院スタッフの意見をご提示していきたいと思います。この場で発信することはあくまで、ひとりの専門家、そしてひとりの市民としての意見でしかありません。しかし、こうした小さな声であっても様々な角度から本件が考察されることで、「カジノ法案」導入に伴う議論が活発化されれば幸いです。

今日は、今年の7月に横浜で開催された日本精神神経学会のシンポジウムを扱ったニュース記事(『中日新聞』2014年8月19日「ギャンブル依存症で医師らシンポ 診断法の確立模索」)、そして、2年ほど前にカジノ法案成立の動きが活発化しだした頃のニュース記事(『産経ニュース』2012年10月3日「米娯楽王が日本進出を宣言 カジノリゾートが大阪にやってくる?」)を元に、「カジノ法案」導入について考察していきたいと思います。

(※以下、太字部は上記記事からの引用)

 

 

自民党など超党派の議員連盟が「統合型リゾート推進法案(カジノ法案)」を提出し、秋の臨時国会での成立を目指す中、ギャンブル依存症への対策強化を求める声が高まっている。これまでパチンコなどが大きな社会問題になりながら、医療の取り組みが遅れていた分野だ。(『中日新聞』2014年8月19日「ギャンブル依存症で医師らシンポ 診断法の確立模索」)

 

後半部は、現場の感触から言っても全くその通りです。今や、ギャンブル依存所の推定罹患者数は、本人が自覚していないケースも含め、約560万人(厚生労働省,2009)であると言われています。これは、近年社会問題として叫ばれ、国を上げての対策が講じられてきたうつ病の3倍弱の数字。にもかかわらず、ギャンブル依存症は、医療分野における取り組みが大変遅れているのです。

ですから、今回のカジノ法案については、日本経済の活性化というメリットに焦点化された議論が展開されている一方で、ギャンブル依存症という社会問題を増幅させてしまうかもしれないという危険性についての関心はとても薄いのではないかという印象を受けます。

現在でさえ、問題の深刻さに対して対策が遅れている分野において、救済策の考案をおざなりにして依存症者の増大に拍車をかけるであろう「カジノ法案」のみを推進するのは、少し無鉄砲なのではないかというのが、率直な感想です…。

 

マカオやシンガポールではカジノリゾートが相次ぎ建設され、観光を中心に経済効果をもたらしているだけに、不況にあえぐ日本にカジノ建設を望む声は今後さらに高まるかもしれない。(中略)カジノは世界120カ国以上で認められている。(カジノ大手ラスベガスサンズ)アンデルソン会長は「日本ではギャンブル性が高い娯楽がいくつもあるのに、なぜカジノがないのか。パチンコとは異なり、IRは観光客や雇用、税収をもたらすメリットがある」と強い口調で話す(『産経ニュース』2012年10月3日「米娯楽王が日本進出を宣言 カジノリゾートが大阪にやってくる?」)

 

上記は、カジノ法案が成立に向け熱を帯びはじめた頃に注目されていた記事の一部ですが、マカオやシンガポール等の世界のカジノリゾートと、日本へのカジノ誘致を同一視するのは少し疑問を覚えます。

今では「24時間眠らない街」として全世界で有名となったラスベガスも、約150年前は広大な荒野でした。1900年台初頭に、宿泊施設とカジノを組み合わせた複合施設が初めて誕生したことから、電気・水道などのインフラが整備され、人口が増えていく足がかりとなったそうです。つまり、ラスベガスのカジノは、日本のように、すでに出来上がった都市にカジノを誘致したものではなく、街の発展とともにあったものなのです。

私自身、以前に訪れたラスベガスで感じたのは、カジノは現地の人々の生活(仕事)そのものだということです。当のラスベガスに住む人々にとってカジノが主たる娯楽ではないというのは不思議な感じがしますが、生まれた頃から当たり前にあった、いわば「仕事場」を、今になって娯楽として捉えられないのは当然のことなのかもしれませんね。実際にカジノに興じて大金を落としていくのは観光客がほとんどで、現地の人が「ポケットマネー以上のお金を費やしてカジノで遊ぶ」ことはまずないそうです。

日本の場合はどうでしょう…?記事にあるような、「ギャンブル性の高い娯楽がすでにいくつもある日本」にカジノが誘致された場合、カジノに興じるのは海外の観光客より、昔からギャンブルに親しんでいる日本人が多くを占める気がしてなりません。なにより、日本の美しい四季や、昔ながらの建築物、風情のある町並みを求めてやってくる観光客が、自国や隣国でもっと手軽に楽しめるギャンブルを日本で興じることに魅力を感じるでしょうか…。

 

 

数年以内の解禁が現実味を帯びてきた日本におけるカジノリゾート。外国人観光客誘致や税収増による地域振興、震災復興費用の捻出(ねんしゅつ)などが期待されるが、ギャンブル依存などを懸念する声も根強く、地域住民の理解がカジノ解禁の“最後の壁”となる。誘致合戦においては一歩リードとみられる大阪も、ギャンブルにとどまらないIRの魅力を今後どのように発信し、理解を得るかがカギになる(『産経ニュース』2012年10月3日「米娯楽王が日本進出を宣言 カジノリゾートが大阪にやってくる?」)

 

「カジノ法案」導入に関する税収増は、本法案の目玉として主張されているメリットでした。しかし、先ほども述べた通り、「その税金を払うのは誰か」ということが大きな問題になってくるのではないかと思います。カジノ法案によって税収が増えたとして、それが国民から得た税金であれば、国内でお金を移動させているに過ぎません。それも、弱い立場の個人から、強い立場の国へ、です。多額の“ギャンブル税”を払う市民、つまりギャンブルに大金を費やす人(ギャンブル依存症者も多いことでしょう)の中には、消費者金融で借金をしてまでギャンブルをやめられないでいる人もいます。

「ギャンブル依存は個人の責任」という世論も、ひとつの純粋な感情として理解はできるのですが、人は何にもハマらず、頼らず生きていけるほど強いものでしょうか?マジョリティが、仕事に没頭し、恋人に依存するように、悲しいことにその対象がたまたまギャンブルだった人もいる。それは紛れも無い事実です。そうした現状に目をそむけ、「個人の責任」という正論をかざしているばかりでは、事態は改善していかないと思うのです。

また、ギャンブル依存症は、本人だけでなく、何の非もない家族や周囲の人々が巻き込まれやすいものです。ギャンブル依存症のカウンセリングを担当していると、ギャンブルで負った負債のために子どもに満足な教育を受けさせられないケース、借金が原因で離婚や一家離散してしまうケースなどを多々、目に耳にします。そうした現状を日々目にしている専門家としては、「カジノ法案」の成立により増えた国税の一部でも、ギャンブル依存症の治療費に当てられるような法整備がなされることを願ってやみません。

 

 

引用記事URL:www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2014081902000007.html(中日新聞)

sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/121003/wec12100307000000-n1.htm(産経ニュース)

 

ギャンブル依存症研究所
〒450-0002 名古屋市中村区名駅四丁目26-7名駅UFビル9F
TEL:052-446-5085


メンタルヘルス ブログランキングへ